理念・考え方

子どもに大人の言うことを聞かせる時代は終わらなければならない

世の中を見渡すと、子どもたちがいかに大人都合に付き合わさせられているのか、はっとする瞬間がたくさんあります。

私たち大人がそうであるように子どもは全員が違う子で、それぞれが自分を中心に「子ども」を生きている。
子どもはまだ幼く、大人と比べればできないことや知らないこと、分からないことが多いので、大人は子どもの情緒の安定や生命の保持は当然ながら、その健やかな成長と福祉に責任を持っています。

一方で、子どもは幼くとも立派な一人の人間です。

しつけの概念や「◯歳ならここまでできるのが普通」といった大人が考える当たり前にとらわれるあまり、無意識のうちに、他の子と比べてムダに一喜一憂していたり、子ども自身の大切な心をおざなりにしていないか。これまでの子どもという存在へのまなざし、態度、「子ども観」を今、改めていかなければならないのではないか。
乳幼児の保育や発達支援という仕事に携わる身として、誰かにとかよりもっと大きな、世の中の「大人たち」という社会マジョリティーに対して日々そんなことを真剣に考えてしまいます。

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少し前ですが、日本の子どもの幸福度に関するショッキングな調査結果がニュースになっていました。

子どもの幸福度、生活満足度や読解力がカギ(ベネッセ 教育情報サイト) – Yahoo!ニュース 国連児童基金(ユニセフ)が、先進38カ国の子どもたちの幸福度を調査したところ、日本は世界で総合20位、精神的幸福度では37 news.yahoo.co.jp

先進国の子どもたちの精神的・身体的な健康と学力・社会的スキルについてランキングしたこのユニセフのレポートカードシリーズ最新版は、今までの「子どもが育っていく過程」つまり就学前、就学後、さらに社会人へとなっていく道筋の当たり前について警鐘が鳴らされた内容になっています。

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日本の「子どもの幸福度」は、総合順位としては20位(調査対象38カ国中)で中位のレベルにあります。
しかし衝撃なのは、身体的健康は1位でありながら、精神的幸福度は37位という最下位に近い両極端な結果です。

まず、身体的健康の調査指標は「5~14歳の死亡率」「5~19歳の過体重/肥満の割合」の2つで、日本は最上位です。

”日本の子どもの死亡率はとても低く、これは、効率的な医療・保健制度を有していること、また、5~14歳の子どもの主要な死因が事故であることを考えると、日本が安全面でもすぐれていて事故から子どもを守れていることも示しているでしょう。過体重・肥満については、多くの国でその割合が急増していますが、日本は2位に大きく差をつける1位で、これは食習慣やライフスタイルなどによるものでしょう。他の国々は、日本から学ばなければなりません。”

ユニセフ報告書「レポートカード16」先進国の子どもの幸福度をランキング日本の子どもに関する結果より引用

そんな誇らしい結果の一方で、日本の子どもの「こころ」に関する調査結果に愕然とします。

精神的幸福度の調査指標は「生活満足度が高い15歳の割合」「15~19歳の自殺率」です。これが38カ国中37位。なんでこんなことになっているのでしょうか。

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以上、出典:ユニセフ イノチェンティ研究所 レポートカード 16

ここで、自殺率が平均より高い結果について、いくつかデータをみて掘り下げてみます。
子どもの「こころ」について考える上で避けられない社会問題がいくつかありますが、まず頭に浮かぶのがいじめです。

これを書いていたらまさに文部科学省が昨日発表した調査資料がニュースになっていました。

いじめ過去最多、82%の学校で 生徒ら317人が自殺:朝日新聞デジタル  2019年度に全国の小中高校などでいじめを認知した学校は、全体の82・6%で過去最多となった。早期発見や報告を学校に求め www.asahi.com

「いじめの認知件数が過去最多となり、児童生徒の自殺は前年度に続き300人を超えた」ということが書かれています。が、文科省の資料を詳しく見ると、いじめの認知件数の増加と自殺率との相関性については読み取れませんでした。

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また、この調査は「学校から報告があったケース」に限定されているので、もう一つ別の資料を、目を手で覆った指と指の隙間から恐る恐る見てみました。

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出典:厚生労働省・警察庁

いずれにしても、毎年300人以上の子どもが自ら命を絶っている。その内訳は、概ね200人が高校生、100人が中学生。

そして、

さらに幼い小学生が毎年10名前後、自殺しているという事実があります。

私たち保育者は小学校に入るまでの乳幼児の育ちに携わっていますが、その先数年後にどうしてこんなことが起きてしまうのか。
あまりに辛い話ですが、私たちのような職業の人間は向き合わなければなりません。
ピンポイントなソースが見つけられなかったのですが、そこに触れている記事がありました。

小学生の自殺、最多は「家庭問題」 厚労省が原因分析:朝日新聞デジタル  自殺の原因は、小学生では家庭問題が多く、中高生から学校の問題が増える——。厚生労働省が過去10年の自殺統計を分析したとこ www.asahi.com

”小学生の原因は、男女いずれも1位が家庭問題で、男子は「家族からのしつけ・叱責(しっせき)」42・9%、「学校問題その他」17・9%。女子は「親子関係の不和」38・1%、「しつけ・叱責」33・3%だった。”

一番近い大人による子どもへの態度が関係していることがはっきりと分かります。

続けて、もう一つデータを見てみます。
子どもの命や人権を考える上で避けて通れない、児童虐待に関する調査です。

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出典:厚生労働省

毎年70人前後の命が児童虐待により奪われています。

子どもの健康面・安全面への保障
      ⇅
子どもの精神的幸福度の低さ
子どもの自殺率の高さ
幼い子どもが命を落とす理由

これらを踏まえて整理すると、

今の大人たちによって(のおかけで)
日本の医療や保健、安全面、食習慣やライフスタイルにより子どもたちのカラダを守れている

それなのに一方で、

今の大人たちによって(のせいで)
日本で「毎年」「400人近くの子どもが」心を痛めて命を落としている

このままで良いはずがありません。何が変わらなければならないのか。
考えれば考えるほど、私はこう思います。

子どもに大人の言うことを聞かせる時代は終わらなければならない。

もちろん危険が伴うことや生活習慣、世の中のルールといった生きる上での基本を大人は教えてあげなければなりません。
大人の都合を一方的に押し付けていないか、見直していかなければならないのではないか、ということです。

日本の子どもの精神的幸福度を上げるためにはどうすばよいのか。
日々、乳幼児の保育や発達特性が見られる子(特別な配慮や個別的な支援が望ましい子どもたち)の療育に携わる中で、行き着くのは…

「子どもの自己肯定感」と、その自己肯定感が育まれる世の中や環境づくりを担う「大人の子ども観」

私たちといろきっずでは、園児一人ひとり、その子自身の内面に自己肯定感が根付くような関わりや保育をもっとも重要なことであると位置付け、「子どもの最善の利益」に直結する鍵であることを念頭に仕事に取り組んでいます。

次回は、この「自己肯定感」について書いてみたいと思います。

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