理念・考え方

子どもの自己肯定感と、大人の「子ども観」

書店に行くと、子どもの「自己肯定感」に関する書籍がたくさん並んでいます。育児本コーナーだけでなく、大人の自己啓発本の中にも多く見かけます。

世界的に日本の子どもの自己肯定感の低さは前々から指摘されていますが、2020年教育改革、Al時代の到来、グローバル化、さらに未曾有のコロナ渦といった激動のあおりを受けてか、かつてないほどにフューチャーされている印象があります。

自己肯定感が低い日本の子どもたち

実際、日本の子どもたちの自己肯定感が低いというのはどの程度のものなのでしょうか。
そして、その原因や背景はどこにあるのでしょうか。

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出典:内閣府「令和元年版 子供・若者白書」

確かにデータ上では一目瞭然です。諸外国と比べて日本は「自分自身に満足している」「自分には長所があると感じている」子どもたちが異様に少ないことが分かります。
そして危惧されるのは、これが今にはじまったことではないということです。
何も変わらなかったらこの先も、日本の子どもたちは自己肯定感が育まれにくい環境で育ち、自己肯定感が根づかぬまま大人になっていくことになります。

自己肯定感というものが人間にとっていかに大切かは誰にでも分かることなのでここでは触れませんが、自己肯定感が低いことが、若者の自殺率が先進国でワースト1・いじめ大国・子どもの精神的幸福度が低い、といった問題と関連しないはずがありません。

では、日本の子どもの自己肯定感が低いのは、そもそもなぜなのか。データは諸外国と比較した相対的な結果なので、子どもが自己肯定感を得られて幸福度が高い国は(子どもにとって)どんな社会なのか?を知った方が早いかもしれません。
日本の子どもの置かれている状況は、諸外国と比べてどう違うから自己肯定感が低い子どもたちが多くなってしまうのでしょうか。


子どもが幸せな国が示唆すること

世界一子どもが幸せな国として知られるのがオランダです。先のエントリーで取り上げたレポートカードの「子どもの心の幸福度」でも第1位がオランダです。

オランダといえば「教育の自由」を基盤に共通した教科書や指導要領にしばられず多様な教育が広く普及していることで有名です。多くの書籍や記事で紹介されています。

私自身もこの目でどうしても見てみたくて、昨年、世界一子どもが幸せな国オランダとお隣ドイツのオルタナティブ教育施設を一挙に視察させていただく機会に恵まれました。

ピラミーデ(ピラミッドメソッド)、イエナプラン、フレーベル、シュタイナー、モンテッソーリ、レッジョ・エミリア・アプローチ…名だたる教育法の実践現場を見て、色々と考えさせらました。
私が保育者としての観点で感じた個人的な印象になってしまいますが、いくつか列挙します。(どの教育法の園での話かは混在してしまっています。ご容赦ください)

●子ども同士で向かい合って座る。

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先生の方を向いて座って絵本の「読み聞かせ」を楽しんだり、みんなで同じ方向を向かって歌ったりという活動がありません。
子どもたちが向き合って座って話す”サークル対話”を毎日。トピックも子ども発信、いつどの子が話すこともあり得る。
先生が主導するのではなく傍らで見守っている感じが何とも素敵でした。

●先生はこどもにNO(ダメ!)を言わない。代わりにSTOP(ちょっと待って)という言葉を使う

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ダメ!という禁止ワードは、子どもがその理由を理解できていない幼児に使ってしまうのは非常に危険なコトバです。私たちといろきっずの保育現場でも代わりに肯定的な表現や伝え方を大切にしていますが、ダメではなく「STOP」というのはすごく分かりやすいですね。
さらに、その先のやり取りも、望ましいあり方を言って聞かせるのではなく、子どもの気持ちや意見に耳を傾ける「間」が子どもに与えられる。子どもの意思を丁寧に扱っているのがひしひしと。

●子どもの自主性が優先されるというよりも、そもそも「前提」である

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何を使うか、何で遊ぶか、子ども自身で選ぶのが「前提」であり、かつただ何でもというのではなくプロジェクト活動やテーマ、背景にある理論など意味づけの中で展開されている。また、玩具や教材一つひとつに意味を持たせて環境として用意しておくことが保育者の重要な役割であり、こだわっていらしゃるのが印象的で素敵だなと思いました。

●子どもが過度に子ども扱いされていない

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小さな子どもであっても、しっかり意思を持った対等な一人の人間。その子だけの空間や、特定のモノが用意されていたり、一人の個人として尊重されているのをすごく感じました。

●子どもの就学進路が多様・無数にある⇄子ども自身の個性を踏まえてベストな道を選ぶ

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とにかく就園先就学先の選択肢が多いことに驚きました。日本だと保育所か幼稚園かこども園か、公立の小学校か私立かといった王道な既定路線みたいなのがありますが、オランダでは子ども一人ひとりの能力や個性、意思によって様々な選択肢の中から進路を選んでいけるというのが印象的でした。

オルタナティブ教育がすべてではありませんが、これら施設の視察を通じて、ひとまとめに言えば「そもそも大人の子どもに対する目がまるで違う」ことにショックを受けました。

子どもは大人と対等であり、子ども自身の個性や意思が尊重され、子どもが自分で「選ぶ」機会も時間も与えられるのが当たり前。

このような社会の中だったら、子どもは安心して自己を発揮し、他の子と比べてどうとか、大人が喜ぶような「こうしなきゃ」に応えるプレッシャーを感じたりせずに、自尊心や自負心、自己効力感といったものを獲得しながら自分らしさを育んでいけるだろうと痛感します。

逆に言えば、これらが日本の当たり前の中には欠けているのではないか、足りていないのではないかと考えてしまいます。

子どもは大人がお世話をしてあげる存在。他の子と同じように「ふつうに」育ってもらうことを願い、大人が主導する子育て論や育児観のもとで、大人が考える立派な進路(学歴)を歩むことが理想的。

こう言うとちょっと極端かもしれませんが、他の国を知れば知るほど、日本はこれまでになかった新しいことや他者とは異なる道を選ぶのにものすごく勇気がいる社会なのではないかと思います。

大人の「子ども観」を見直すことから

私たちが携わっている保育の世界では「子ども主体」が近年キーワードになっています。この「子ども主体」な概念、認識が、業界内だけでなく社会全体でもっと広がったらいいのにといつも思っています。
大人による子どもという存在への態度や認識、関わり方、それらのベースになる「子ども観」が社会全体で変わっていかない限り、子どもたちが自己肯定感や幸福感を得られる世の中にはならないのではないでしょうか。

と、そんなことを考えているだけでは仕方ないので、まず自分たちが出来ることとして、といろきっずでは徹底して子ども主体であること、自己肯定感の根っこが育まれる保育環境づくりを実現すべく、「十人十育」を保育理念に、日々試行錯誤しながら取り組んでいます。

次回からは、「小さな保育」をベースにしたといろきっずの子ども中心の保育や発達支援、給食について、少しずつ紹介していきたいと思います。

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